そらとびUFO

駄文をまとめ候

第一回お題SS 弓、星、黄泉の国

 その国には、生が無かった。
全てが死から始まり、 見渡すかぎりの絶望と終焉だけがこの国の礎であった。
「空というのは、一体どこまで続いているのですか?」
光のない瞳を真っすぐに向けながら、少年は私に問いかける。
闇に覆われた空の下、彼の栗色の髪は淀みなく風になびいていた。


「どんな暗闇にも始まりがあるでしょう。君が"それ"を見たいを望めば、きっと。」
私の答えに不満げな顔を浮かべ、彼は空を見上げた。


 じっと押し黙ったまま、二人同じ空を見つめ、考える。
この世界に光などあるものか。あればここは死の国、黄泉の国などと呼ばれはしないだろう。
彼の問が再び頭にこだまする。
一体どこまで、一体いつになったらこの闇から逃れられるのか。


「あ。」
少し驚いた彼の声と同時に、私の瞳の中に一筋の光が走った。
白く輝くその姿は、彼と私の眼前を、弓から放たれ意志をもった矢のように過ぎ去ってゆく。
 光が通り過ぎ、再び瞳が暗闇だけを映すようになっても、互いに一言も声を上げることはなかった。
永遠に続く終焉は一瞬にして、一筋の光をも黒に染める。
ただ、暗闇の中に浮く少年の栗色の髪は、小さな光を纏い、星のように揺れていた。