そらとびUFO

駄文をまとめ候

第三回お題SS 戦慄、告白、ネコバス

 暖かな室内、座り心地のいい毛皮に覆われた椅子。
今はどんなに速い乗り物でも、このバスの価値には負けるだろう。


産業革命は過ぎ、人間の作った機械が人間の脳を超え、新たな技術を日々生み出している。
動物での遺伝子操作、いわゆるキメラ研究もそのひとつである。
もちろん人道的、倫理的観点からの批判は少なくなかったが、研究で得られたものは、人間の想像より遥かに大きいものだった。
異形の姿をした動物に、人々は戦慄し、時には愛らしさを感じた。


通称「ネコバス」も、この研究で生み出された大きな成果だ。
ネコとバスを融合して生まれたわけではない。中が空洞の大きなネコをバス代わりに使っているだけのことなのだ。
大昔のウマやラクダと同じ、といえば懐古主義者も口を閉ざすだろう。


しかしこのネコバスには大きな秘密がある。
人間が意図して隠しているわけではない。世界で一番精度の高い人工知能が隠蔽を提案したからだ。
大衆に隠し、本質を見せずに得られる成功というのもある。いままでの事例から明らかなことなのだろう。


人工知能に背いて、私はここに告白する。


ネコバスという生物は死なない。生物ではもはやないのかもしれない。
食べ物も睡眠も取らずに生きていける。不老不死、人類の理想。
それをバスという移動手段に使っているのが、人類だ。


利益のため、ネコバスの数は目に見えて増えている。
このまま一体どうなるのだろう。人間は、いつ気付くのだろう。
幸い、私には死の救いがある。哀れな彼らをどうか助けてやって下さい。
アーメン。