そらとびUFO

駄文をまとめ候

小説のブログ記事

小説(ムラゴンブログ全体)
  • 第三回お題SS 戦慄、告白、ネコバス

     暖かな室内、座り心地のいい毛皮に覆われた椅子。 今はどんなに速い乗り物でも、このバスの価値には負けるだろう。 産業革命は過ぎ、人間の作った機械が人間の脳を超え、新たな技術を日々生み出している。 動物での遺伝子操作、いわゆるキメラ研究もそのひとつである。 もちろん人道的、倫理的観点からの批判は少な... 続きをみる

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  • 第二回お題SS 万年筆、砂糖、飛行機

     小さな窓から見える町並みは私にとって忌々しい過去だった。 煙を吐く建物たちも、萌える緑も、もうすぐ雲の下に隠れ消える。 清々しく、生まれ変わる時の気分、いや、脱皮する生き物の気持ちが近いだろうか。 ひとりくだらないことを考えながら、思わず口元が緩んでしまう。 「行き先に恋人でも?」 静かに発せら... 続きをみる

  • 山流

     群れをなし、生の限りを尽くさんとする魚たち。互いに身体をぶつけながら上へ上へと押し合い、高みへゆく。 その傍らには、枝から落ちた青い若葉が、水の流れに身をまかせ漂い下ってゆく。 遠くでは鳥たちが賑やかに鳴いている。風の中を、木々のざわめきの中を、はばたきながら空に溶けてゆく。 風が一鳴りすると、... 続きをみる

  • さらばオクトパス 01

     いつもと同じように、虫が鳴いている。硝子越しに夜空を見つめるが、星は見えない。小雨が降ってきたらしく、虫の声もしだいに止んでいった。気持ちをはやらせないよう、雨音に耳を傾ける。今が過ぎ去ることを待つしかない自分に不甲斐なさを感じながら。 ドン、ドンドン 鈍く湿った音が雨音を遮る。嫌な予感が一瞬に... 続きをみる

  • 第一回お題SS 弓、星、黄泉の国

     その国には、生が無かった。 全てが死から始まり、 見渡すかぎりの絶望と終焉だけがこの国の礎であった。 「空というのは、一体どこまで続いているのですか?」 光のない瞳を真っすぐに向けながら、少年は私に問いかける。 闇に覆われた空の下、彼の栗色の髪は淀みなく風になびいていた。 「どんな暗闇にも始まり... 続きをみる

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